季節による気候の変化とフライトへの影響、フライトの方法(その7) ヘリコプターは、機首方向に進むとは限りません
航空機は、風が吹く(空気が移動している)中を、動かない地上の目的地に向かって飛行しています。このため、自分が地図上に計画したコース上空を飛行するには、あらかじめ風に流されることを予測して、風上側に機首を少し向けて飛行する必要があります。イメージとしては、川を船で渡るときに、対岸の目標地点に船首を向けて進むと、対岸の目標地点より川下側に到着するため、川上側に船首を少し向けて渡っていくイメージです。この自分の計画したコースの方向及び航空機の速度と風向・風速の関係から、あらかじめ風上側にむける角度が決まります。この風上側に向ける角度をWCA(ウインド コレクション アングル:偏流修正角)といいます。航空機は風が全くないときか、真正面又は真後ろからの風を受けているとき以外は、すべてWCAを必要とするのですが、ヘリコプターは一般的に飛行速度が遅いので、同じ風でも飛行機に比べて大きなWCAを必要とします。特に冬は上空の風が強いことが多いので大きくなります。操縦士は飛行前にこれを計算し、飛行しながらその誤差を修正して飛行します。つまり、ヘリコプターは自分の行きたい方向を向いて真っ直ぐ飛行しているのではなく、少し風上側を向いて飛行しているわけです。
また、風の方向によって、地面上を移動する速度(対地速度といいます。)は変わるので、目的地の到着予定時刻も変わります。川を下る船は「船の速度+川の流れる速度」の速度で早く、川を上る船は「船の速度―川の流れる速度」の速度で遅いというイメージです。旅客機でも、日本からアメリカに行くときは、ジェット気流中を追い風状態で飛行するので短時間で、逆にアメリカから日本に戻ってくるときには時間がかかることをご存知の方も多いと思います。
このWCAや対地速度・到着予定時刻の計算方法等は、操縦士の資格を取得する際の学科試験においても出題され、操縦訓練においても重要なので、しっかりと教育されます。最初は若干戸惑う方もおられますが、すぐに理解して短時間で計算できるようになります。自分の能力が向上したと感じられるときです。あなたも経験してみませんか?
操縦席からの目線 撮影:アルファーアビエィション
次回は「ヘリコプターで、WCAをとっているときのイメージ図」について説明します。お楽しみに。 飛行機免許、ヘリコプター免許にご興味のある方はアルファーアビエィションまでお気軽にお問い合わせください。